バスルームから軽快にシャワーから湯が降り注ぐ音がする。
時々それに混じってキラの鼻歌も聴こえる。
今、キラは非常に機嫌が良かった。
なんたって流星群が見られるのだ。
テレビで何回か見たことがあるのだが、テレビで見たときでさえもキラは大いに感動した。
幾筋も流れる星を見て、幼かったキラはよく流星群が見たいと駄々をこねたものだ。
その流星群を絶好のタイミングで見られるというのだからもうキラの心は浮かれっぱなしである。
「流星だよ、流星♪い〜っぱい流れ星がふってくるんだよ。すごいよね、アスラン。」
シャワーを浴びながら、バスルーム特有の響くような声でキラはアスランに話しかけた。
しかし、アスランは素知らぬような顔で目を閉じてシャワーの湯を楽しんでいる。
なんと、アスランは猫のくせにお風呂が大好きだった。
普通の猫なら水を浴びるのは嫌いなはずなのだが、アスランはその逆である。
キラがバスルームに入ろうとすると、どこからともなく表れちゃっかりシャワーの蛇口の前に陣取っている。
そして早く湯を出せと言わんばかりにじっとこちらを見つめてくるのだ。
キラがアスランを猫なのかと疑いたくなるのはこのことも関係している。
「おいで、アスラン。」
シャワーを止めてキラはアスランを抱えるべく両手を広げた。
するとそれに反応したアスランがぴょんとキラの両手にジャンプする。
そしてアスランを抱えたままキラは湯船に浸かった。
アスランは猫のくせに湯船に浸かるのも好きなのだった。
風呂から出てパジャマに着替えた後、キラはアスランの体を拭いてあげた。
なぜだかわからないが、アスランはキラが着替え終えるまで律儀にバスルームの中で待っている。
キラが着替え終えた頃合を計ってバスルームから出てくるのだ。
決して濡れた体のままで歩き回ったりはしない。
その上、ドライヤーも怖がったりしない。
〈なんだかなぁ………。〉
アスランの世話に手間がかからないのは大いに結構なのだが、あまりに手間がかからなさ過ぎるとなると逆に飼い主としては寂しい気がする。
キラとしてはもう少し世話を焼かしてくれるほうが良いなというのが本音だった。
「わぁ…………」
次々と空から落ちてくる星。
その絶え間ない星のイリュージョンを目の当たりにしてキラは言葉も無く空を見上げた。
ただ感嘆の声を漏らすだけである。
ベッドの上にキラとアスラン、一人と一匹。
開け放した窓から見える流星を見続けた。
「あ、そうだった!!」
窓から身を半分乗り出した格好で見ていたキラが急に声を上げるとあわてて両手を合わせた。
流れ星と言えばお約束の願い事をしているのである。
しかし、うっかりしていてキラは願い事を考えるのを忘れてしまっていた。
〈しまった!!〉
何か願い事をしなくてはとあれこれ考えるが、いざとなるといい願い事が思い浮かばない。
そうこうしているうちに次第に流星群の勢いが治まってきていた。
もうだめかとキラがあきらめかけた時だった。
『ニャア〜』
ふいに猫の鳴き声がした。
びっくりしてキラは閉じていた目を開ける。
『ニャア〜』
すると再び猫の鳴き声がした。
今度はその鳴き声がしたほうに顔を向けてみた。
〈……アスラン?〉
なんと、キラの視線の先にはアスランがいた。
〈初めて鳴いた………〉
透き通ったような凛とした鳴き声。
初めてきいたその声にキラは感涙しそうになった。
今までなんとかアスランの鳴き声が聴きたいと方法を駆使してみたが、どれも駄目だった。
なので、これは2ヶ月アスランと共にしてやっと成した快挙である。
「アスランが人間になりますように………」
ぽつりと呟いた願い。
突如頭に浮かんできて、知らない間に声に出していた。
猫を人間に―――――。
あまりにも非現実的過ぎる願い事を自分が考え付いたことにキラは内心驚いた。
子供っぽいとはよく言われるが、いくらなんでもこの願い事は自分でも子供じみていると呆れてしまう。
しかし常日頃から薄々は考えていた。
もしアスランが人間ならと………
そう思わせるだけの魅力がアスランには確かにあると思う。
〈よし、決めた。〉
キラは再び両手を合わせ、目を閉じた。
「アスランが人間になりますように!!」
流れ星に願い事と言っても、昔から言われているちょっとした楽しみみたいなものでどうせは叶うはずも無いものである。
たまにはこんな悪ふざけもいいものだといつの間にか静かになった星空を見つめながら思った。
そして欠伸を一つ、そのままベッドに横になった。
するとめずらしくアスランがキラの傍らに寄ってきて体を丸めた。
アスランは寝るとき、いつも体を丸めるのだ。
〈もしかして一緒に寝てくれるの?〉
アスランの突然の行動に少し驚きながらも、夜型ではないキラはすぐに眠気が襲ってきてそのまま深く寝入ってしまった。
言い訳↓(反転)
実は私も流星群を生で見たことはありません。
死ぬまでに一回は見たいなぁ………。
星空見るの好きです。
のわりに星座とかあまり知らないという………(汗)
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